千利休が考えたおもてなしの心、侘びとは。
利休は茶の湯を通して、人と人とが心を触れ合わす「直心(じきしん)の交わり」のための「茶室」を造りました。
それは、わずかな空気の流れも、かすかな気配をもつかむことが出来る静寂の小宇宙。しんとして清々しいその場所は、心の耳をひらかせます。
路地に一歩を踏み入れたとたん、自分の一挙一動が鏡に映ったかのように自分に迫ってくる不思議。 それは日常の所作や心がけがすべて表れるという茶室の力です。ここで人は己に出会い、磨かれ、心を養います。
亭主も客も、もてなす側ももてなされる側も、自分に向きあい、自分に問う空間。
利休はこうした精神的な気のめぐりがある「茶室」こそ、心と心が触れ合うほどの感動のおもてなしが出来ることを知っていたのでしょう。
千利休画像 堺市博物館所蔵
利休は茶の湯の極意を「夏はいかにも涼しきように、冬はいかにもあたたかなるように、炭は湯のわくように、茶は服のよきように、これにて秘事はすみ候」と言いました。
これこそが「侘び」の精神。自分を飾ることなく相手を思いやり、道理にかなう「作法の自然体」を生んだ利休の発想は、お客様に真の安らぎを与える虚心坦懐なるおもてなしの心となりました。